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海に入った太陽光は、深さとともに少しずつ弱くなります。そのため、「何mまで届くか」は、わずかな光を検出できる深さを指すのか、植物プランクトンの光合成を支える明るさがある深さを指すのかで答えが変わります。光合成に利用できる光を比べるときは、光合成有効放射(PAR)を使い、海面直下の1%まで弱まる深さを目安にすることがよくあります。

「光の届く層は深さ200 mまで」という説明は大まかな目安であり、どの海でもその深さに明確な境界があるわけではありません。NOAAの海中の光に関する解説(英語)でも、明るい上層と、条件によっては約1,000 mまで検出できるごく弱い光を分けています。プロファイルから光の届く深さを調べるには、「光が届く」とみなす基準を具体的に決める必要があります。

PARで測るのは波長400〜700 nmの光

PARで扱うのは、波長400〜700 nm(ナノメートル)の光です。BGC Argoの放射計は、この範囲で海中を下向きに進む光を測定でき、DOWNWELLING_PARは、水平な単位面積を1秒間に通過する光子の量を表します。よく使われる単位はµmol photons m⁻² s⁻¹で、光合成の速さそのものを測っているわけではありません。波長帯とセンサーの構成は、BGC Argoガイドの放射測定の節(英語)で確認できます。

これに対して、490 nmの下向き放射照度は狭い波長帯の光の強さを測ったものであり、一般にW m⁻² nm⁻¹というエネルギーの単位で表します。広い波長帯の光子を数えるPARとは、数値をそのまま置き換えられません。BGC Argoの下向き放射照度の解説(英語)では、こうした光の測り方を説明しています。ほかのセンサーとの関係は、BGC Argoは何を測る?を参照してください。

有光層の深さを「1%」で表す理由

海水や水中の溶存物質・粒子は光を吸収し、散乱によって光の進む向きも変わります。下向きのPARの減り方は、水の光学的な性質と海に入る光の条件の両方に左右されます。海面直下に対して同じ割合の光が残る深さを比べると、光が減衰しやすい海水では浅く、透明な海水では深くなります。Morelほかの研究(英語)では、海水の光学特性と光の届く層の関係を扱っています。

有光層の深さを表す際によく使うのが、下向きのPARが海面直下の1%になる深さです。この記事でも、この光学的な目安を使います。式ではPAR(z) / PAR(0−) = 0.01となり、0−は海面のすぐ下を表します。Leeほか(2007年、英語)は、このような相対的な光の割合から海水の透明さを調べる方法を説明しています。

横軸を対数目盛りにした2本の模式的なPARプロファイルで、減衰が強い場合は50 m、弱い場合は100 mで海面直下の1%になる様子

図では、光の減衰率が深さによらず一定の場合を、減衰が強い場合と弱い場合で比較しています。横軸の目盛りを一つ進むとPARが10倍変わるため、この座標での直線は、深さとともに光が指数関数的に減ることを表します。

一方、対象とする生物の総光合成と呼吸が釣り合う深さは、補償深度と呼ばれます。こちらは光の絶対量や、生物の種類、弱い光への順応などに左右される生物学的な境界です。1%の深さが補償深度に近い場合もありますが、そこが完全な暗闇になるとも、光合成が一切できなくなるとも限りません。Marraほか(2023年、英語)では、光の割合と生物活動から求めた生産層の深さを比較しています。

同じ1%でも、届く光の量は違う

日中に測定した二つのプロファイルを比べる例を考えます。それぞれの測定中の日射は一定とし、二つのプロファイルで異なるのは日射の強さだけとします。水の性質、光が入る方向、波長ごとの割合は同じと仮定します。

比較する値明るい条件暗めの条件
海面直下のPAR1,000200
1%の深さでのPAR102

いずれも説明用の値で、単位はµmol photons m⁻² s⁻¹です。光の絶対量が5倍違っていても、この仮定の下では1%になる深さは変わりません。

実際の観測では、曇っている間も日射が一定とは限りません。フロートの浮上中に雲が通過することがあり、太陽高度も緯度、季節、その場所の時刻によって変わるため、プロファイルの折れ曲がりが水の性質の変化ではなく、測定中の日射の変化を反映している場合もあります。Organelliほか(2016年、英語)では、放射測定の品質を評価する際に、こうした条件を考慮しています。

したがって、日中の1回のプロファイルから、一日に受けた光子の総量は分かりません。また、センサーには光が入らなくても生じる暗出力があり、夜間に得た暗出力に近い値どうしを割っても、日中の有光層の深さは求められません。

PARプロファイルから有光層の深さを求めるときの確認点

WMO ID、サイクル番号、位置、日付、UTC時刻を確認し、その場所で日中に測られたプロファイルかを確かめます。そのうえで、PARの測定値がある圧力範囲を確認し、浅いほうから深いほうへ値をたどります。

1%の深さを求めるには、深い場所の測定値だけでなく、基準となる海面直下の値も必要です。最も浅い測定点が海面から数m下にある場合、その値の1%を探しても、海面直下を基準とした通常の定義にはなりません。定量的に求める場合は、海面直下のPARを適切に推定できること、1%を挟む範囲に十分な測定値があること、補間や近似の方法を明示することが必要です。利用できる測定範囲内でPARが1%まで下がっていなければ、その範囲では有光層の下端を判定できません。最深の測定点を下端とみなすこともできません。

また、Argoの鉛直座標は深さではなく圧力です。海洋上層では1 dbarがおよそ1 mに相当しますが、幾何学的な深さへの換算は緯度による重力の差や海水の密度分布によって変わります。

空白は「光のない層」を示すとは限らない

PARの欠損は、センサーの測定範囲、観測設定、品質管理による除外などで生じます。OceanGraphの制約事項のガイド(英語)でも、PARの値はおおむね0〜200 dbarの表層付近に集中すると説明しています。その下が空白でも、光が届かなくなる境界とは判断できません。また、個別プロファイルに値があっても、隣り合うサイクルの値が足りず、断面図を描けない場合があります。

ゼロ付近の値にも注意が必要です。放射計には暗出力、温度依存性、長期的なドリフトがあり、Jutardほか(2021年、英語)では、それらの影響を補正する方法を扱っています。センサーの向きや影も測定に影響します。また、OceanGraphでは公開するPARを0.1 µmol m⁻² s⁻¹刻みに丸めているため、表示値が0でも完全な暗闇とは限りません。

定量解析へ進む際には、Argoの元データで変数ごとのデータモード、利用可能な補正済み変数、品質管理フラグを確認してください。放射測定の公式品質管理マニュアル(英語)とOceanGraphのData Filtering Policy(英語)は、それぞれ測定値の品質管理と公開対象の選び方を確認する資料です。

クロロフィルや硝酸塩と同じ圧力で比べる

海面付近に比べてPARが小さくなる圧力範囲を見つけ、クロロフィルや硝酸塩の測定値があれば同じ圧力で比較します。光が弱く栄養塩が多い層の近くにクロロフィル極大があれば、生物活動を考える手がかりになります。ただし、色素の極大を見つけただけでは、生物量や成長速度を直接測ったことにはなりません。この区別は深層クロロフィル極大の読み方、栄養塩との関係は硝酸塩プロファイルの読み方で確認できます。

光の分布は、光合成で酸素が作られる可能性のある層を知る手がかりにもなります。酸素分布には大気との交換、呼吸、輸送も関わります。海の中の酸素はどこに多い?では、それぞれの過程が酸素の鉛直分布にどう影響するかを説明しています。

OceanGraphでPARを調べる

  1. 地域と期間を絞って検索し、Only profiles with BGCを有効にします。この条件では対応するBGC変数のいずれかを含むプロファイルが選ばれるため、PAR自体があるかも確認します。
  2. プロファイルのグラフを開き、PARを選びます。日時と位置を踏まえ、測定値がある圧力範囲、線の途切れや海面付近の不規則な変化を確認します。
  3. 前後のサイクルと、利用できるクロロフィル、硝酸塩、水温、塩分を比較します。その際には、日射条件の違いとフロートの移動も考慮します。

OceanGraphではPARをグラフで確認でき、490 nmの下向き放射照度はダウンロードしたデータで調べられます。検索とダウンロードの操作はSearch and Bookmarkガイド(英語)で確認できます。デスクトップブラウザーでは、Analysis LabのVertical Profilesガイド(英語)に沿って、ダウンロードしたJSONプロファイルを並べて比較できます。

参考資料