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多くの海域では深層にも酸素が溶けていますが、その濃度は海面から海底へ向かって単純に減り続けるわけではありません。酸素濃度は海面付近で高く、中層では呼吸による消費と弱い換気によって低くなり、高緯度でできた冷たく酸素の多い水が届く深層では再び高くなることがあります。
その具体的な形は海盆ごとに大きく異なり、この鉛直構造を直接示すのが溶存酸素プロファイルです。
海面付近に酸素が多い理由
大気と海洋は海面で気体を交換し、風と波によって、取り込まれた酸素が上層へ混ぜ込まれます。
海面付近の酸素には、次の過程も影響します。
- 溶解度:ほかの条件が近ければ、冷たい水には暖かい水より多くの酸素が溶ける
- 光合成:植物プランクトンなどが光の届く層で酸素を作る
- 呼吸:生物は水柱のさまざまな深さで酸素を消費する
- 混合:乱流が酸素の多い表層水を下へ運ぶ
複数の過程が同時に働くため、海面付近の酸素濃度が高いという事実だけから、一つの原因を決めることはできません。
光の届く層より下で酸素が減る理由
海面付近で作られた有機物の一部は沈み、生物によって分解されますが、その際の呼吸によって酸素が消費されます。
しかも、海面下の水は大気との間で酸素を交換しにくいため、酸素の消費が大きく換気が弱い海域では、中層に酸素極小層ができます。
気象庁の 溶存酸素量 には、太平洋でよく見られる形が示されています。海面下で酸素濃度が低下し、中層で極小となり、深層で再び増えるパターンです。NOAAの 酸素極小層の解説(英語) も、物理・化学・生物過程の組み合わせを説明しています。
極小となる深さや濃度は、どの海盆でも同じではありません。東部熱帯太平洋、アラビア海、北太平洋西部、閉鎖性の強い海、高緯度の海では、それぞれ異なる形になります。
深層水へ酸素が届く仕組み
深層で酸素が作られるわけではなく、海面で換気された水が高密度になって沈み、その後、海洋内部に広がることで酸素が運ばれます。
高緯度で形成される冷たい水には、海面にある間に比較的多くの酸素が溶け込むことがあり、海面を離れた後は、混合し、呼吸による消費を受けながら移動します。そのため、酸素は生物による消費だけでなく、水がどのように循環してきたかを考える手掛かりにもなります。
深層で酸素が増えていても、そこで酸素が生産されたとは限りません。別の海域で換気された水塊が到達した結果かもしれません。
次の図は、海面付近で供給される酸素、中層での消費、深層水による輸送を一つの水柱にまとめたものです。

海面下に局所的な極大が現れることがある
プロファイルによっては、海面直下よりやや深いところに亜表層酸素極大が現れ、その要因として次の過程が考えられます。
- 海面直下での光合成
- 海面で換気された酸素の多い水の沈み込み
- 別の水塊の移流
- 水温による酸素の溶けやすさの違い
- 層の間の混合
酸素濃度の曲線だけでは、これらを分離できません。水温、塩分、混合層深度、周囲のプロファイル、データ品質と照らし合わせて確認する必要があります。
酸素を水温・塩分と一緒に読む
酸素の変化を、水温・塩分が示す物理構造と同じ深さで照らし合わせると、酸素曲線の意味を考えやすくなります。
次の点を確認します。
- 酸素の変化は混合層の上か下か
- 水温躍層や塩分の遷移と同じ深さにあるか
- 二つの酸素プロファイルが、そもそも異なる水塊を捉えていないか
- 前後のサイクルにも同じ特徴があるか
物理構造の基礎は、海洋の水温・塩分プロファイルを読み解く で確認できます。BGCデータとして詳しく読む場合は、BGC Argoの溶存酸素プロファイルを読み解く へ進んでください。
濃度と飽和度は同じではない
酸素濃度が海水中に溶けている酸素の量であるのに対し、酸素飽和度は、その水温、塩分、圧力で平衡状態にあるときの濃度と比べた値です。
冷たい水の酸素濃度が高い理由の一部は、暖かい水より酸素が溶けやすいことにあります。濃度だけを比べると、次の影響がすべて重なります。
- 水温・塩分で変わる溶解度
- 大気と海洋の交換
- 生物による生産と消費
- 輸送と混合
一つの酸素濃度だけで判断できないのは、このためです。また、酸素飽和度は濃度の単位ではなく、データセットの中では両者を取り違えやすくなります。この区別とµmol/kg、mL/L、mg/Lの換算は、海洋データの溶存酸素の単位で扱っています。
すべてのArgoフロートが酸素を測るわけではない
Core Argoフロートが主に測るのは圧力、水温、塩分であり、溶存酸素は、生物地球化学センサーを載せた一部のフロートから得られます。
OceanGraphのOnly profiles with BGCは、対応するBGC変数を一つ以上含むプロファイルに検索対象を絞り込みます。酸素専用のフィルターではないため、選んだプロファイルに溶存酸素があるかを改めて確認します。
Search and Bookmark(英語) でフィルターの仕様を確認できます。Subsurface Oxygen Maximum(英語) では、OceanGraphが導出するSOM指標と制約を説明しています。
酸素プロファイルを順番に確認する
次の順に読むと、解釈しやすくなります。
- 日付、位置、WMO ID、サイクル番号を確認する
- 溶存酸素が含まれているか確認する
- 水温と塩分を先に読む
- 酸素曲線を海面から下へたどる
- 局所的な極大、中層での低下、深層での増加を探す
- 原因を考える前に、前後のサイクルと欠損を確認する
欠損値は酸素ゼロを意味せず、センサーの有無、品質管理、データモードによって、プロファイルで利用できる値が変わります。科学的に利用する場合は、Argoデータの品質管理ガイドで補正済み変数とQCの意味を確認してください。
覚えておきたいこと
海洋の酸素は、大気との接触、物理的な溶解度、光合成、呼吸、混合、循環の釣り合いで決まります。その結果、海面付近で多く、中層で少なくなり、深層では海域ごとに異なる構造が現れます。
酸素プロファイルの形は、複数の過程が重なった結果です。水温、塩分、場所、時刻、データ品質と組み合わせて初めて、無理のない解釈ができます。

