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海面水温から分かるのは海の一番上がどれほど暖かいかであり、海面下にどれほどの熱が蓄えられているかまでは分かりません。そのため、海面水温が同じでも、一方は薄い暖水層だけで、もう一方は数百m下まで暖かいということがあります。

そこで海の温暖化を調べるときには、海面水温だけでなく深さ方向の測定値も使い、重要な指標の一つとして海洋貯熱量を用います。この指標が表すのは、海面の一点の水温ではなく、一定体積の海水に蓄えられた熱です。

同じ海面水温でも海中は違う

海面水温が同じ二つの地点を考えてみましょう。

  • 地点Aでは、暖かい層が数十mしかなく、そのすぐ下に冷たい水がある
  • 地点Bでは、暖かい水が数百m下まで続く

海面の値は同じですが、地点Bの上層海洋にはより多くの熱が蓄えられています。この違いは鉛直プロファイルなら見えますが、海面の一点だけでは分かりません。

次の図は、同じ海面水温の下に、薄い暖水層がある場合と、暖水が深くまで続く場合を比べたものです。

似た海面の下で暖水が続く深さが異なる二つの水柱を比較した概念図

だからといって、海面水温が重要でないわけではありません。大気と海洋の相互作用や、海流、前線、海洋熱波を捉え、気象・生態系に関わる海の状態を知るうえで重要です。一方、海洋全体に蓄えられた熱量とは、分かることが異なります。

水温はその場所の状態を示し、貯熱量には水の量も関係する

水温は、ある場所の水がどの程度暖かいか、または冷たいかを表します。貯熱量には、次のものが関係します。

  • 基準からの水温偏差
  • 影響を受けた海水の量
  • 海水の密度と比熱
  • 積算する深さの範囲

ごく薄い表層と厚い水の層の水温を同じだけ上げても、海へ加わる熱量は同じではありません。

NOAAの Ocean Heat Content, Salt Content, and Sea Level Anomalies(英語) では、海面下の水温から貯熱量の変化を求め、熱膨張による海面水位への寄与と結び付ける考え方が説明されています。

海面と海洋内部が同じように変わらない理由

熱は海面を通じて大気と海洋の間を移動しますが、その場の海面だけに残るわけではありません。

風、波、対流、海流、渦、大規模な循環が、熱を水平方向・鉛直方向へ運びます。そのため、次のことが起こります。

  • 短期間の天気で海面だけが急に変わる
  • 夏の暖かさが浅い層にとどまる
  • 冬の混合が海面の変化を深くまで運ぶ
  • 海流が熱を別の海域へ運ぶ
  • 海面の変化が小さくても、亜表層が暖まる

海の季節は何mの深さまで届く? で扱う季節変化は、短い時間スケールでも深さを考える必要がある例です。

エルニーニョは海面下でどう見える? では、同じ考え方を太平洋赤道域に当てはめ、海面水温とともに水温躍層の深さや暖水の分布がどう変わるのかを説明しています。

海洋内部の水温をどう測るか

人工衛星は海面を広域かつ高頻度で観測することを得意とする一方、海面下は観測船、係留系、自律型測器、プロファイリングフロートなどで測ります。

Argoは、広い海域で上層から中層までの水温・塩分を繰り返し測るため、特に重要です。国際Argo計画も全球観測網の主要な用途の一つに海洋貯熱量の監視を挙げており、詳しくは Argo and climate change(英語) で紹介されています。

観測方法を組み合わせる理由は、海の中はどうやって測る? で説明しています。

一つのプロファイルだけでは全球の傾向は分からない

一つの水温プロファイルから、ある場所・時刻の暖水が浅いか深いかは分かりますが、それだけで全球の海が温暖化しているとは判断できません。

気候規模の変化を判断するには、次のものが必要です。

  • 長期間にわたって一貫して処理された記録
  • 広い海域を覆う観測
  • 品質管理とバイアス補正
  • 適切な基準期間との比較
  • 不確実性の評価
  • 観測の偏りを考慮した手法

二つのプロファイルを比べるときも同じです。差が生じた理由は、季節、場所、渦、観測条件、長期変化のいずれか、または複数かもしれません。傾向解析では、それらを区別する必要があります。

海面水温と海洋貯熱量で分かること

知りたいこと役立つデータ・指標
海面はどの程度暖かいか海面水温
暖かい層がどの深さまで続くか水温プロファイル
一定の深さまでにどれほどの熱が蓄えられているか海洋貯熱量
数十年を通じて海が温暖化しているか広い海域を代表する、品質管理済みの長期記録

互いに関係する量ですが、置き換えることはできません。

傾向解析の前に鉛直構造を確認する

OceanGraphは、全球の海洋貯熱量の時系列を計算するものでも、気候解析の代わりになるものでもありません。その前段階として、実際のArgoプロファイルから海中の水温構造を確認できます。

次のように条件を絞った比較から始められます。

  1. 小さな海域と短い期間を選ぶ
  2. 海面水温が近いプロファイルを選ぶ
  3. 暖水がどの深さまで続くか比べる
  4. 密度と混合に関わる塩分も確認する
  5. 差を解釈する前に、日付と位置を比べる

Search and Bookmark(英語) に検索項目が記載されています。プロファイルの基礎は、海は深くなるとどう変わる? で確認できます。

その先で「数十年間に海盆全体の貯熱量がどう変わったか」を調べるなら、気候解析用のデータセットと再現可能な統計処理へ進む必要があります。

覚えておきたいこと

海面水温が表すのは海面付近の水温であるのに対し、海洋貯熱量は一定体積の水に蓄えられた熱を表します。両者が同じように変化する場合もありますが、いつも一致するわけではありません。

海面の暖かさが薄い層だけなのか、深い暖水層の一部なのかは、プロファイルを見ると分かります。ただし長期的な海洋温暖化を判断するには、多数の観測、一貫した処理、不確実性の評価が必要です。