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海は、深くなるにつれて暗くなるだけではありません。水温、塩分、密度、溶存酸素に加え、生物の生息環境も変化し、多くの海域ではいくつかの層に分かれています。外洋では、短い時間で大きく変化するのは主に海面付近で、その下に性質が急に変わる層があり、深層では変化が緩やかになることが一般的です。
ただし、これは出発点となる見方であって、どの海にも当てはまる決まった形ではありません。緯度、季節、海流、降雨、海氷、水塊がたどってきた経路によって、プロファイルの形は変わります。その違いを見るために使うのが、ある性質の変化を海面から深層まで一本の線で示した鉛直プロファイルです。
海面から2000mまでを見てみる
海面から下へたどると、上層、主な遷移層、深い水では、変化をもたらす要因と時間の尺度が異なります。
上層は短い時間でも変化する
太陽は海を上から暖め、風、波、海面の冷却、蒸発、降雨もまず海面に作用するため、上層は天気や季節に強く反応します。
表層付近には、次のような状態が現れます。
- 暖かい表層水と、その下の冷たい水がはっきり分かれている
- 風や冷却で混ざり、水温・塩分がほぼ一様になっている
- 強い雨や融氷のあとに低塩分になっている
- 降水より蒸発が多く、高塩分になっている
このように、海面水温の地図が示すのは一番上の状態に限られ、その状態がどの深さまで続くかは分からないため、地図だけで海の全体像を捉えることはできません。
表層の下に遷移層が現れる
多くのプロファイルでは上層の下で水温が急に下がり、この遷移層を水温躍層と呼びます。同様に、塩分が大きく変わる層は塩分躍層、密度が強く変わる層は密度躍層です。
これらの境界が、いつも同じ深さにあるとは限りません。水温による密度変化を塩分が強めることも、部分的に打ち消すこともあります。海洋学で水温と塩分を一緒に読むのは、このためです。
深い水は比較的ゆっくり変化する
主な遷移層より下では、水温がより緩やかに変化することが一般的です。1000〜2000m付近の水の多くは、日々の天気から長く切り離され、大規模な海洋循環によって運ばれてきました。
深層に冷たい水が多いのは、高緯度でできた冷たく高密度の水が沈み、海洋内部へ広がることが大きな理由です。ただし、どのプロファイルも海面から海底まで単調に冷たくなるわけではありません。周囲とは性質の異なる水の流入、中層水、地熱活動の影響、極域特有の条件などによって、別の形も現れます。NOAAの 深くなるほど海が冷たくなる理由(英語) も、基本的な仕組みを簡潔に説明しています。
次の図は、ここまで説明した表層、遷移層、深層のつながりをまとめたものです。各層の厚さや境界の深さは、場所と時期によって異なります。

塩分には一つの決まった鉛直パターンがない
水温には、暖かい表層から冷たい深層へ向かう比較的つかみやすい形がありますが、塩分はそれほど単純ではありません。
プロファイルには、次のような構造が現れます。
- 降雨、河川流入、融氷による低塩分の表層
- 蒸発の強い海域に見られる高塩分の表層
- 別の海域から運ばれてきた亜表層の塩分極大
- 特定の水塊に対応する中層の塩分極小
- 緩やかに変化する深層の塩分
こうした違いは、水温だけでは見つけにくい水の起源や、地球規模の水循環を知る手掛かりになります。
二つの性質を組み合わせて考える方法は、水温と塩分は海水密度をどう決めるのか で詳しく紹介しています。
鉛直プロファイルから何を考えられるか
プロファイルを見ると、「海面の下はどうなっているのか」という漠然とした疑問を、具体的な確認項目に変えられます。
- ほぼ一様な上層はどのくらい厚いか
- 水温が最も急に変わるのはどこか
- 塩分も同じ深さで変化しているか
- 海面下に極大・極小があるか
- 二つの地点の違いは上層だけか、深層まで続くか
重要なのは、一点の値よりも曲線全体の形です。たとえば海面水温が20℃でも、暖かい層が20mほどで終わるのか、数百mまで続くのかは分かりません。
海洋の水温・塩分プロファイルを読み解く では、こうした曲線を読む順序をさらに詳しく説明しています。
圧力と深さは近いが同じではない
Argoフロートが直接測る鉛直座標は圧力で、通常はdbar(デシバール)で表します。圧力は潜るほど高くなるため、プロファイル図の縦軸として使われます。
上層海洋を大まかに見るとき、1 dbarはおよそ1mに相当しますが、完全に同じではありません。正確な換算には緯度も必要です。OceanGraphは0〜2000 dbarのプロファイルデータを両端を含めて保持し、標準的なCore Argoはおおむね2000m付近から海面へ向かってプロファイリングします。
「標準的な海のプロファイル」は一つではない
模式図と形が異なるだけで、そのプロファイルを異常だと決めつけないでください。
形が変わる主な理由には、次のものがあります。
- 緯度と季節
- 近くの海流や前線
- 風と直前の海面冷却
- 降雨、蒸発、河川、海氷
- 湧昇と沈降
- 深さごとに存在する水塊
熱帯の夏には暖かく強く成層した上層が見られるのに対し、中緯度の冬にはほぼ一様な層がはるかに深くなることがあります。また、高緯度では海面から深いところまで冷たい水が続く場合もあり、こうした違い自体が海の状態を読み解く手掛かりになります。
Argoプロファイルで海の層を見る
Argoフロートは、水柱を上昇しながら圧力、水温、塩分を繰り返し測ります。標準的な観測サイクルとセンサーは、国際Argo計画の How do floats work?(英語) で説明されています。
OceanGraphでは、次の順で比べると分かりやすくなります。
- 小さめの海域と短い期間で検索する
- 一つのプロファイルを選び、場所と日付を確認する
- 水温を海面から下へ読む
- 塩分が同じ深さで変化するか確認する
- 季節または海域の異なるプロファイルと比べる
Search and Bookmark(英語) には検索項目の説明があります。いくつかのプロファイルを比べたら、次は 海の季節は何mの深さまで届く? を読むと、上層の変化を季節と結び付けられます。
鉛直構造が読めるようになると、海流や気候変動とのつながりも考えやすくなります。海流はなぜ生まれる? では風・地球の自転・密度差によって水が動く仕組みを、エルニーニョは海面下でどう見える? では太平洋赤道域の暖水と水温躍層の変化を説明しています。
覚えておきたいこと
海では、主に表層とその下の遷移層で性質が大きく変わり、深層では比較的緩やかに変化します。最初は水温が分かりやすい指標ですが、密度に関わる成層や水の起源を考えるには塩分も欠かせません。
一つのプロファイルが表すのは、一つの場所・時刻の水柱です。複数のプロファイルを見比べることで、海が場所や季節によってどう変わるのかが見えてきます。


