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黒潮は暖かい亜熱帯の水を日本沿岸へ運ぶのに対し、親潮は冷たい亜寒帯の水を南へ運び、その違いは海面下の水温、塩分、溶存酸素、水塊の分布にも現れます。
一つのプロファイルだけで海流の境界の位置を特定したり、すべての特徴を特定の海流の影響だと断定したりはできません。それでも、前線の両側で水柱がどう違い、その差がどの深さまで続くのかは確認できます。
二つの海流が運ぶ異なる起源の水
黒潮は、北太平洋亜熱帯循環の西側を流れる強い海流で、西岸境界流と呼ばれます。東シナ海から日本南岸に沿って進み、その先は黒潮続流として東へ流れます。
親潮は北太平洋亜寒帯循環の西側を流れ、千島列島に沿って亜寒帯の冷たい水を南西へ運び、北日本の東側へ達します。
二つの海流の影響が接する海域には、強い前線、渦、枝分かれした流れ、混合が生じるため、実際の海は地図上の二本の矢印よりも複雑です。
海盆規模の循環が作られる仕組みや、黒潮のような西岸境界流が強くなる理由は、海流はなぜ生まれる? で説明しています。
次の図は、日本の東で暖かい水と冷たい水が蛇行や渦を伴いながら接する様子をまとめたものです。

最初に見える違いは水温
同じ時期に比べると、黒潮の影響を受けた上層水は一般に親潮系の水より暖かく、その差は海面の値だけにとどまりません。
プロファイルからは、次のことを確認できます。
- 黒潮系の暖水がどの深さまで続くか
- 親潮系の上層が一様に冷たいか、強く成層しているか
- 南北の水温差が最も大きい深さ
- 上層が大きく違っても、深層では値が近づくか
気象庁の 北西太平洋の水温・塩分の特徴 では、日本南岸沖の急な水温変化と黒潮の関係や、水温・塩分から海流の構造を調べる考え方が説明されています。
塩分は水の履歴を考える手掛かりになる
親潮は、冷たいだけでなく、低塩分で溶存酸素や栄養塩が多い水としても説明されます。気象庁の 親潮 では、海流と水の性質の両方が紹介されています。
黒潮系の亜熱帯水には高塩分の層が見られることがありますが、「黒潮はどの深さでも高塩分」と考えるのは単純すぎます。降雨、蒸発、混合、中層水の存在によって、塩分の極大・極小はさまざまな深さに現れます。
塩分プロファイルを見ると、次の違いを探せます。
- 同じ暖水でも、淡水の影響が異なる
- 表層または亜表層に亜寒帯の低塩分水がある
- 海面直下より深いところに、亜熱帯起源の高塩分層がある
- 日本東方での混合と沈み込みに関係する中層水がある
一つの値から水塊名を決める前に、水温と塩分は海水密度をどう決めるのか で両者の組み合わせを確認してください。
酸素を見ると違いを捉えやすくなる
ほかの条件が近ければ、冷たい水には暖かい水より多くの酸素が溶けます。海面で換気されてからあまり時間がたっていない亜寒帯の水は、比較的高い酸素濃度を海洋内部まで保つことがあります。
親潮系の水に溶存酸素が比較的多いのは、こうした性質も一因です。ただし、酸素濃度には水温だけでなく、大気との交換、生物による生産と呼吸、循環、最後に換気されてからの時間も影響します。
酸素プロファイルは、水温・塩分と一緒に読みましょう。同じ深さで酸素と水温・塩分が変わっていれば、それぞれを単独で見るより、水塊の境界を判断する手掛かりが増えます。
酸素の基本的な鉛直分布は、海の中の酸素はどこに多い? で説明しています。
二つの海流の境界は動く
「ここから南は黒潮、北は親潮」という線を固定して考えたくなりますが、境界は変化します。
注意したい要素には、次のものがあります。
- 親潮南限の季節移動
- 黒潮・黒潮続流の流路変動
- 暖水渦と冷水渦
- 枝分かれした流れや、本流から切り離された細長い水の帯
- 亜熱帯水と亜寒帯水の混合
したがって、その水が黒潮系か親潮系かを緯度だけで判断することはできません。日付、プロファイル全体、周囲のプロファイル、場合によっては水温・塩分図も確認する必要があります。
Argoプロファイルから分かること、分からないこと
Argoプロファイルは、一つの場所・時刻で水温や塩分などを深さ方向に直接測ったデータであり、前線の南北で比べることで、海面下の強い違いを見つけられます。
一つのプロファイルだけでは、次のことはできません。
- 海流全体の流速分布を測る
- 前線の正確な位置を確定する
- 時間変化と場所の違いを完全に分ける
- 各特徴を作った過程を証明する
また、フロートはサイクルの大半を海面下で過ごし、設定された漂流深度で移動してからプロファイリングするため、その軌跡がそのまま海面海流の経路を表すわけではありません。こうした制約を踏まえることで、プロファイルから無理なく判断できることに集中できます。
二つの海域を条件をそろえて比べる
OceanGraphでは、次のように比較できます。
- 対象とする年と月を選び、期間を限定する
- 日本の南から南東の海域で、黒潮の影響を受けたプロファイルを探す
- 同じ期間に、さらに北東側で親潮の影響を受けたプロファイルを探す
- まず水温、次に塩分を比べる
- 利用できる場合は溶存酸素も比べる
- 緯度だけで判断せず、θ-S図で水温・塩分の組み合わせを確認する
上層は季節で変化するため、日付の条件をできるだけそろえることが大切です。Search and Bookmark(英語) には、海域と期間の指定方法があります。プロファイルを読むときは、海洋の水温・塩分プロファイルを読み解く を参考にし、その後に 海洋学のT-S図を読み解く へ進むと理解しやすくなります。
覚えておきたいこと
最も分かりやすいのは水温の違いで、黒潮系の水は一般に暖かく、親潮系の水は冷たくなります。さらに塩分と酸素も合わせて見ると、水の起源や履歴を考える手掛かりが増え、その差が海面から数百m下まで続く場合もあります。
日本東方は二色に分かれた海ではなく、前線、渦、枝分かれした流れ、混合水が移動する海域です。同じ期間に得られた複数のプロファイルを比べ、海流名を自動的に当てはめず、水の性質を示す観測値として読み解くことが重要です。


