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海の中にも季節がありますが、その影響が海底まで同じように届くわけではありません。夏の日射は海面付近に暖かく浅い層を作り、冬の冷却と強い風は上層をはるかに深くまで混ぜることがあります。季節の影響を強く受ける層より下では、水温と塩分の一年を通じた変化は小さくなるのが一般的です。

何mまで季節が届くかは海域によって異なり、数十mほどの海域もあれば、冬の混合が数百mに達する海域もあります。

夏と冬でプロファイルが変わる理由

夏と冬の違いは、熱と乱流が上層海洋を異なる形に変えることから生まれます。

夏は暖かい表層を作る

太陽は海を上から暖めます。加熱が強くても、その熱を深くまで分配するほど混合しなければ、海面の水は下の冷たい水より低密度になります。

典型的な夏のプロファイルには、次の特徴があります。

  • 暖かく浅い上層
  • その下で急に下がる水温
  • 浅い混合層
  • 変化が比較的小さい深層水

この強い季節的な遷移を季節水温躍層と呼びます。熱が比較的少ない量の海水に集中するため、日射が続くと海面水温が短期間でも変わりやすくなります。

冬は夏の成層を崩す

冬には海面から熱が失われ、風も強くなることが多く、冷却は表層水の密度を高める一方で、風と波は乱流を作ります。両方が働くと混合が下方へ進み、夏にできた浅い水温躍層が弱まります。

典型的な冬のプロファイルには、次の特徴があります。

  • 冷たい海面
  • 水温・塩分がほぼ一様な厚い上層
  • 深い混合層
  • その下にある、季節変化の小さい水への移り変わり

気象庁の 表層混合層 には、日本近海の例があります。1982〜2010年の平均では、夏季の混合層が10〜20m程度である一方、冬季には100mを超える海域が広がっています。これは季節差の一例であり、どの海にも適用できる固定値ではありません。

次の図は、季節変化の小さい深層水の上で、夏には浅い暖水層ができ、冬には混合が深くまで届く様子をまとめたものです。

夏の浅い暖水層と冬の深い混合、その下にある似た深層水を比較した概念図

季節が届く深さを決めるもの

深さを決めるのは暦だけではありません。

緯度と日射

中高緯度では、熱帯よりも季節による加熱・冷却の差が大きくなる傾向があります。熱帯には一年を通じて水温躍層が残る海域があり、温帯では季節水温躍層がはっきり発達することがあります。

風と海面からの熱損失

強い風は乱流混合を促し、強い冷却は表層水の浮力を弱めて対流を起こす場合があるため、どちらも混合層を深くする方向に働きます。

雨、蒸発、海氷

淡水は表層を軽くし、水が冷たくても混合を妨げることがあります。一方、蒸発は表層の塩分と密度を高めます。また、海氷の形成と融解も、高緯度の海に特有の影響を与えます。

海流と水塊

海流や渦によって、異なる水塊が同じ海域へ入ってくることがあります。二つの時期のプロファイルの差には、季節だけでなく観測場所や水塊の変化も含まれます。

混合層深度は季節変化が届く深さの手掛かりになる

混合層は、乱流によって水温や塩分が比較的一様になった海面付近の層です。その下端を一つの値で表す指標が混合層深度(MLD)です。

MLDを使うとプロファイル全体の形を比べやすくなりますが、実際の海中にある壁ではありません。しきい値の定義によって値は少し変わり、表層のデータ点が足りないプロファイルでは計算できない場合もあります。

考え方とOceanGraphの現行の計算条件は、海洋の混合層深度(MLD)とは?Mixed Layer Depth(英語) で確認できます。

海面の変化は海全体の変化ではない

季節による水温変化は海面で大きくても、季節水温躍層より下では小さいことがあります。海面の測定値だけで上層海洋全体を説明できないのは、このためです。

海面水温が同じでも、海面下は異なる場合があります。

  • 薄い暖水の下に、すぐ冷水がある
  • 暖水がはるかに深くまで続いている

後者のほうが、海面水温が同じでも上層に多くの熱を蓄えています。この違いは、海面水温だけでは海の温暖化が分からない理由 にもつながります。

データを読み違えずに季節を比べる

比較するときは、次の条件を意識します。

  • 同じか近接した海域
  • 異なる年の同じ月、または同じ海域の夏と冬
  • 水温と塩分の両方
  • 一つではなく複数のプロファイル
  • 各プロファイルの日付と位置

夏と冬を一つずつ比べれば仕組みは理解できますが、その二つだけで海域の平年の状態を代表するとは限りません。天気、渦、フロートの移動によって、どちらかが例外的なプロファイルである可能性もあります。

Argoデータで季節の鉛直構造を見る

Argoフロートは水柱を繰り返し測るため、上層海洋が複数のサイクルを通じて変わる様子を捉えられます。OceanGraphでは、二つの見方が役立ちます。

同じ海域のプロファイルを比べる

同じ海域を夏と冬に分けて検索し、次の点を比較します。

  1. ほぼ一様な上層の厚さ
  2. 水温が最も急に変わる深さ
  3. 塩分が水温による成層を強めているか、打ち消しているか
  4. 深層部分がどの程度似ているか

一つのフロートを取得順に追う

時系列鉛直断面図は、繰り返し取得したプロファイルを、縦軸に深さ、横軸にサイクル番号を取った一枚の図にまとめます。季節による境界の上下を見つけやすくなりますが、フロートは場所も移動しています。したがって、図に見える変化には、時間経過と観測場所の移動がどちらも含まれます。

Trajectory and Time-Series Vertical Section(英語) には機能の説明があり、海洋学の時系列鉛直断面を読み解く では欠損域を含む解釈上の注意を説明しています。

覚えておきたいこと

海の季節変化は、多くの場合、海面付近で最も強く現れます。夏の加熱が浅い成層を作る一方、冬の冷却と風は上層をより深くまで混ぜます。ただし、その深さは海域、天気、淡水の影響、海洋循環によって変わります。

海面水温だけでは季節の深さは分かりません。水温・塩分プロファイルの形がどう変わったかを見ることで、季節が水柱のどこまで届いたかを読み取れます。