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海水の密度は、水温・塩分・圧力によって決まります。同じ圧力では、一般に冷たい水ほど、高塩分の水ほど密度が高くなるため、水温と塩分の組み合わせが成層や混合に影響します。
先にプロファイルの読み方を学ぶ場合は、海洋の水温・塩分プロファイルを読み解く を参照してください。
塩分と水温から分かること
水温には、次のような影響がよく表れます。
- 表層の加熱と冷却
- 季節変化
- 鉛直成層
- 深い水・浅い水との接触
塩分には、次のような影響がよく表れます。
- 蒸発
- 降雨
- 河川流入
- 融氷または海氷生成
- 異なる水の混合
水温と塩分に影響する過程には重なる部分もありますが、まったく同じではないため、両方を合わせて読むことで、水柱を形作ってきた過程をより詳しく捉えられます。
海水密度への影響
塩分と水温を一緒に考える主な理由は、密度にあります。
同じ圧力では、大まかに次の関係があります。
- 冷たい水は、暖かい水より高密度になりやすい
- 高塩分の水は、低塩分の水より高密度になりやすい
ただし、現場密度は圧力によっても変わるため、水塊の比較や鉛直安定性の評価には、TEOS-10のポテンシャル密度など、熱力学上の規約と基準圧力を明示した量を使います。また、密度は、鉛直方向の層構造、混合、成層、水塊の性質を左右します。
ですから、ある層が暖かいか冷たいかだけでなく、塩分が水温による密度への効果を強めているのか、それとも打ち消しているのかも考える必要があります。
- 暖かい水でも、塩分が十分に高ければ、比較的高密度になり得る
- 冷たい水でも、塩分が十分に低ければ、比較的低密度になり得る
このため、鉛直プロファイルを確認したあとにT-S図やθ-S図を見ると、密度に関わる関係を捉えやすくなります。
一つの単純な規則ではない
「暖かいほど低塩分」「冷たいほど高塩分」といった単純な関係を思い描きがちですが、実際の海はもっと入り組んでいます。水温と塩分は同じ方向に変化することもあれば、反対方向に変化することもあり、どちらになるかは、そこで働いている物理過程しだいです。
表層の加熱
海面が強く加熱されると上層は暖かくなりますが、加熱だけで塩分まで必ず変わるわけではありません。
- 表層の水温は上がる
- 初めのうちは塩分がほとんど変わらないこともある
その結果、暖かい表層が下の水から切り離されると、成層が強まることがあります。
蒸発
蒸発は水だけを奪って塩を残すため、表層の塩分を高めます。日射の強い亜熱帯域では、日射による加熱と蒸発によって、暖かく比較的塩分の高い表層水が見られます。
降雨または河川流入
淡水が流れ込むと塩分が下がり、次のような構造が生じることがあります。
- 低塩分の表層水
- 深さ方向の強い塩分勾配
たとえば暖かい地域で雨が降れば、表層は暖かく、かつ低塩分になり、水温と塩分がそれぞれ異なる過程を反映していることが分かります。
冷却と冬季混合
表層が冷えると上層の海水の密度が高まります。その浮力損失が既存の密度成層を崩すほど十分に強ければ、対流が起きて混合層が深くなることがあります。その結果、次のような特徴が見られる場合があります。
- 冷たい表層水
- 深い混合層
- 鉛直方向にほぼ一様な水温、場合によっては塩分
異なる水の混合
海面で起こる局所的な変化ではなく、水塊同士の混合が重要になることもあります。
- 暖かく高塩分の水と、冷たく低塩分の水の混合
- 表層で性質が変わった水と、深層水との混合
- 地域による水塊の違い
こうした違いが水温・塩分のパターンとして現れるため、その関係を調べるにはT-S図が役立ちます。
海でよく見られる組み合わせ
水温と塩分には、地域の特徴に応じてよく見られる組み合わせがあります。
日本東方にある亜熱帯水と亜寒帯水の違いは、地域的な実例の一つです。黒潮と親潮は海の中までどう違う? では、水温、塩分、酸素がそれぞれどのような手がかりになるかを紹介しています。
暖かく低塩分の表層水
強い加熱と、降雨・河川流入・融氷などの淡水流入が、ともに効いている場所で現れます。水温だけを見れば単なる暖水に見えますが、塩分まで見ると、成り立ちの違う表層だと分かります。
暖かく高塩分の表層水
蒸発の強い地域でよく見られます。水温と塩分の両方が特徴的な表層水を作りますが、密度への効き方は互いに逆向きです。
冷たく低塩分の水
高緯度や、淡水の流入が多い場所で見られ、表層の冷却、融解水、強い季節差・地域差を反映していることがあります。
冷たく高塩分の水
冷却と塩分の増加がともに効いている場所や、表層とは成り立ちの違う深層水として現れます。多くの場合は高密度であるため、水柱の中で表層とは異なる力学的な役割を担っています。
例1:同じ水温、異なる塩分
水温はほぼ同じで、塩分だけが異なる、表面付近の二つの水を考えてみましょう。
水温だけを見れば似たような状態に見えますが、片方の塩分が大幅に低ければ、次のような可能性を考えられます。
- 片方だけが降雨や河川流入の影響を受けた
- そもそも地域の違う水塊である
- 同じ水温でも密度の構造が違う
これは、塩分と水温の関係が、どちらか一方の値よりも重要になることを示す分かりやすい例です。
例2:同じ塩分、異なる水温
塩分はほぼ同じで、水温がはっきり異なる二つの水は、季節による加熱・冷却の違い、同じ地域でも深さの違い、あるいは時期による大気条件の違いを映し出しているのかもしれません。
この場合も、一つの変数だけを見ていては、物理的に重要な違いを見落としてしまいます。
最初に鉛直プロファイルを見る理由
初心者には、まず鉛直プロファイルを見て、水温と塩分が深さとともにどう変わるかをつかむのが分かりやすい方法です。
鉛直プロファイルからは、次のことが読み取れます。
- 暖水・冷水がどこにあるか
- 低塩分・高塩分の層がどこにあるか
- 主な勾配が同じ深さにあるか
- 深層の性質が緩やかに変化するか、別の変化があるか
これらを確認すると、重要な違いが水柱のどこにあるか分かります。
複数のプロファイルを重ねて見る操作は、Analysis Lab: Vertical Profiles(JSONアップロード、英語)で確認できます。

T-S図で関係が明確になる理由
鉛直プロファイルを理解したら、次はT-S図またはθ-S図へ進みましょう。これらの図では、次のことが見えてきます。
- どの水温・塩分の組み合わせが同時に現れているか
- 各深度の点が滑らかな曲線を描くのか、それとも別々の集団に分かれるのか
- 端成分同士の混合をうかがわせる構造があるか
- 水温と塩分が、密度に関わる形でどう組み合わさっているか
こうすると、水温と塩分を別々の線としてではなく、同じ水柱に現れる二つの性質の組み合わせとして読めるようになります。

コードを書く前に実例を比較する
コードを書く前に、実際のプロファイルをいくつか見比べ、同じデータのθ-S図を開くと、両者の関係を理解しやすくなります。
OceanGraphでは、次のことができます。
- 海域と期間で実際のArgoプロファイルを検索する
- 水柱の水温・塩分構造を比較する
- 同じプロファイルを、そのままθ-S空間で見る
- 一つの図だけでなく、複数の例から共通点や違いをつかむ
参考ページ:


