この記事の目次

Argoフロートデータは、取得場所と日時を確認し、圧力に対する水温・塩分の変化をたどると読みやすくなります。品質情報を確認したうえで前後のプロファイルと比較すると、表層、躍層、深層の特徴を捉えられます。

Argoそのものを初めて学ぶ場合は、先に Argoフロートとは?海洋観測データの完全ガイド を読むと理解しやすくなります。

Argoフロートデータに含まれるもの

一つのArgoプロファイルには、基本的に次の要素が含まれます。

  • プロファイルを特定する情報
  • 水柱を通して得られた測定値
  • 測定値を正しく解釈するためのメタデータ

初心者が理解しておきたい代表的な項目は次のとおりです。

項目分かること
WMO IDどのフロートが取得したか
サイクル番号そのフロートの何回目の運用サイクルか。同一サイクルに複数のプロファイルが含まれる場合もある
日付と時刻いつ取得されたか
緯度と経度どこで浮上またはデータを送信したか
圧力鉛直方向の座標
水温水柱の熱的な構造
塩分塩分量と水塊に関する情報
品質フラグ値が品質管理を通過したか

フロート、プロファイル、サイクルの関係を広く知りたい場合は、先に Argoフロートとは?海洋観測データの完全ガイド を参照してください。

プロファイルを読む前に確認すること

グラフの形に注目する前に、まずいくつかの基本情報を確認しておきましょう。

1. 場所と日付から始める

海洋構造は、プロファイルが取得された場所と時期に強く依存します。

たとえば、夏の亜熱帯北太平洋のプロファイルと冬の南大洋のプロファイルを同じ物差しで解釈することはできないため、線の形を見る前に次のことを考えましょう。

  • どの海盆のプロファイルか
  • 沿岸か外洋か
  • 日付から考えてどの季節か
  • 強い成層、淡水化、深い混合がよく起こる海域か

OceanGraphでは、グラフを読む前にも探索中にも、日付、場所、WMO ID、サイクル情報を確認できます。操作方法は Search and Bookmark(英語) を参照してください。

2. サイクル番号と前後のプロファイルを確認する

Argoフロートは繰り返しプロファイルを取得しており、サイクル番号を見れば、そのプロファイルが一連の観測のどこに位置するか分かります。

この情報が重要な理由は次のとおりです。

  • ある特徴が多数のサイクルで持続しているかもしれない
  • 表層の異常が短期間だけ現れたものかもしれない
  • 上層構造が変化しても深層の性質は似たままかもしれない

同じフロートの前後のサイクルと見比べると、特徴を判断しやすくなります。最初に確認したいのは「この線は何を表しているのか」ではなく、「前後のプロファイルと似ているか」であることも少なくありません。ただしフロートは漂流するため、サイクル間の差は時間変化、場所の違い、またはその両方を表し得ます。

3. 利用できる変数を確認する

すべてのArgoプロファイルに同じ変数が含まれるわけではありませんが、多くのプロファイルには、次の中核的な物理変数が含まれます。

  • 圧力
  • 現場水温
  • 実用塩分

これらがArgoの標準変数 PRES、TEMP、PSAL です。OceanGraphなどのアプリケーションは、そこからポテンシャル水温や絶対塩分を追加で計算することがありますが、これらは中核変数の代わりに直接測定・格納される値ではなく派生量です。

さらに、次のような生物地球化学測定を含むものもあります。

  • 溶存酸素
  • クロロフィルに関連する光学変数
  • 硝酸塩
  • pH

初心者は、水柱の基本的な物理構造を示す水温と塩分から始めるのがおすすめです。この二つが読めるようになると、プロファイルのほかの項目も、場所や時期、深さと結び付けて捉えやすくなります。

主要変数の読み方

取得場所や時期、前後のサイクルとの関係を確認したら、測定値を見ていきます。

水温

最初は、暖かさや冷たさをイメージしやすい水温プロファイルから読むとよいでしょう。

次のような特徴を探してみます。

  • 暖かい、または冷たい表層
  • 比較的一様な上層
  • 表面下の急な勾配
  • 深層でより緩やかに変化する値

こうしたパターンから、上層の海が水温によって成層しているのか、最近混合したのか、季節的に状態が移り変わる途中なのかを推し量れます。ただし、塩分の違いが水温による密度差を打ち消す場合、水温だけでは密度成層や混合層深度を確定できません。

水温を読むときは、一つひとつの数値よりも、まずプロファイル全体の形に注目しましょう。表面の一点の値よりも、浅い暖水層や強い水温躍層、緩やかな遷移があるかどうかのほうが大切です。

プロファイルの解釈を詳しく学ぶには、海洋の水温・塩分プロファイルを読み解く も参照してください。

塩分

水温は「暖かい・冷たい」という日常的な感覚があるので直感的に分かるのに対し、塩分にはそこまでの馴染みがないかもしれません。しかし、塩分は水塊を見分ける手掛かりとなり、密度にも影響するため、海洋学では水温と同じくらい重要です。

塩分プロファイルからは、次の特徴を読み取れます。

  • 降雨、河川流入、融氷による表層の淡水化
  • 蒸発による表層の高塩分化
  • 塩分躍層または強い塩分勾配
  • 亜表層の塩分極大・極小

水温の構造がよく似た二つのプロファイルでも、塩分が違えば、異なる性質の水を捉えていることがあります。密度や鉛直安定性、水塊を調べるときは、水温と塩分を組み合わせます。

圧力と深さ

Argoプロファイルは通常、幾何学的な深さそのものではなく、圧力を基準に整理されています。プロファイルの形を大まかに読む限り、圧力を深さに近いものとして扱って構いませんが、両者は同じではなく、実際に測定されている鉛直座標は圧力です。

圧力が高いほど深い場所を表します。

最初から換算方法にこだわりすぎず、まずは鉛直方向の構造とその相対的な変化に注目してください。ただし、メートル単位の深さを定量的に求める場合は、dbarをそのまま正確なmとみなさず、TEOS-10/GSWなどを使い、緯度を考慮して圧力から深度へ換算します。

品質フラグと欠損値

海洋観測データには、欠けた値、除外された値、品質フラグが付いた値があります。

品質情報を読むときは、次の点を確認します。

  • 点が欠けていても、プロファイル全体が無価値とは限らない
  • 適切なデータモードから生または補正済みの値を選び、対応するQCフラグを使う
  • 曲線全体がもっともらしく見えても、悪いQCフラグを見た目だけで覆さない
  • 見かけ上のスパイクは実在することもデータ上の問題であることもあり、判断にはQC、隣接レベル、近隣のプロファイルが必要になる

この点でも、目で見て確認することが役立ちます。数値の表よりも、グラフのほうが不自然な構造に気付きやすいことが多いからです。

一つのArgoプロファイルを段階的に読む例

夏の終わりに亜熱帯域で取得されたArgoプロファイルを開いたとします。

例えば、次の順に読みます。

  1. 場所と日付を確認する
  2. フロートとサイクルを確認する
  3. 水温プロファイルを開く
  4. 表層、主な勾配、深層構造を探す
  5. 塩分プロファイルを開き、水温からの解釈を裏付けるか、見直す必要があるかを考える
  6. 前後のサイクルや近隣のプロファイルと比較する
  7. 水塊の関係を明確にしたい場合はT-S形式の表示を使う

水温プロファイルが次の特徴を示したとします。

  • 暖かい表層水
  • その下の明確な水温躍層
  • より緩やかに変化する深層の値

続いて塩分プロファイルには、次の特徴が見られました。

  • やや低塩分の表層水
  • 高塩分の亜表層
  • より緩やかに変化する深層塩分

この組み合わせは、上層の成層、表層を変化させる過程、性質の異なる亜表層の存在を示唆します。

近接する二つのサイクルを比べて、深層の性質が似ている一方で表層だけが変化していれば、フロートの漂流経路に沿って表層の状態が変わっていると分かります。さらにθ-S図で、深層水の点が狭い範囲に集まり、表層水の点が広く散らばっていれば、水温と塩分の組み合わせからも解釈の手掛かりを得られます。

OceanGraphでは、次の機能でこの流れを実践できます。

OceanGraphで表示したArgo形式データの鉛直プロファイル

この記事の次に読むページ: